【や】    #八重衣

曲名 解        説
「八 重 衣
(やえごろも)


1999.10.30up
石川勾当 作曲 八重崎検校 箏手付 

 
君がため(あなたのため)  春の野にいでて  若菜つむ春の七草) 
    わが衣手(ころもで)(着物の袖に) 雪はふりつつ(しきりに降り続く)』 
光孝(こうこう)天皇(古今集) 
  ・・・(主君に限らず)あなたのために若菜をつんでいるという気持ちをよんでいる。(正月)

 『春すぎて  夏来(き)にけらし来てしまったらしい)  白妙(しろたえ)真っ白な)
    衣ほすてふ(ほすちょう)衣を干すという)   天(あま)の香具山(かぐやま)天から降ってきた
 という伝説から「天の」を付ける) 
(奈良県橿原市大和三山の一つ)
      持統(じとう)天皇(新古今集)
  ・・・夏のすがすがしさをよんでいる。(陰暦の4・5・6月)

 『み吉野の  山の秋風  さ夜ふけて夜もふけて)   
    ふるさと旧都のあったところ)寒く  衣うつなり布を柔らかくするため砧で衣を打っている)
  
・・・旧都吉野山の秋の夜。寒さと砧の音が身にしみるさまをよんでいる。   藤原雅経(まさつね)(新古今集)

 『秋の田の  かりほ(お)の庵(いお)(刈り穂を納める仮の小屋「刈り穂」と「仮庵」を掛けている)
  苫(とま)(カヤやアシで編んだ屋根)をあらみ(屋根の編み目が粗いので。「を・・み」=「が・・ので」
    わが衣手(ころもで)着物の袖は)  露(つゆ)(夜露)にぬれつつ(濡れ続ける)

  ・・・農作業のつらさをよんでいる。(陰暦の7・8・9月)               天智(てんじ)天皇(後撰集)

 『きりぎりす(現在のこおろぎ)  鳴くや霜夜の  さむしろに(粗末なむしろ「寒し」の意が掛けてある
    衣かたしき(自分の衣の片袖を敷いて寝る)  ひとりかも寝む(ん)(ひとりで寝るのかなあー)

  ・・・霜夜にひとり、衣を着たままに寝る寂しさ・わびしさをよんでいる。     藤原良経(よしつね)(新古今集)


文化文政の頃に作曲された京物の代表作で、石川勾当の三つ物(新青柳・融・八重衣)の一つ。
(前歌−手事−ちらし−中歌−ちらし−後歌)の手事物形式で作られている。
この曲は、三絃地歌の難曲で、永らく埋もれていたものを八重崎検校が箏の手付をし、再び世の脚光を
浴び大曲として知られるようになった。特に、手事は込み入っていて、尺八にとっても、最も難曲である。
歌詞は、小倉百人一首の中の「衣」を用いた五首を季節の順に並べている。格調高い歌詞にふさわしく
重みがあって、速く華麗な演奏が必要である。




All rights reserved .
掲載中の画像・文章・音声の無断転載、及びhtmlソースの無断流用は禁じます。
事前にご連絡くだい。
Web_Master:shakuhachigaku_web_master@yahoo.co.jp