【平家物語(巻一)】 「祇園精舎」(ぎおんしょうじゃ)     2000.6.21作成  7/1 Update

シャラの花 
 (写真:庵主 2000.6.20)
次の日には、花が散って
しまいました。


祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
(ぎおんしょうじゃのかねのこえ、しょぎょうむじょうのひびきあり。)

沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を顕す。
(しゃらそうじゅのはなのいろ、じょうしゃひっすいのことわりをあらわす。)

驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し。
(おごれるものひさしからず、ただはるのよのゆめのごとし。)

猛き人も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ。
(たけきひともついにはほろびぬ、ひとへにかぜのまえのちりにおなじ。)

                  
(口語訳)
祇園精舎の、無常堂の鐘の音は、諸行無常の響きをたてる。
釈迦入滅(死ぬこと)の時、白色に変じたという沙羅双樹の花の色は、
盛者必衰の道理をあらわしている。
おごり高ぶった者も、長くおごりにふけることはできない。
ただ春の夜の夢のように、はかないものである。
勇猛な者もついには滅びてしまう。
全く風の前の塵に等しい。
祇園・・・中インドの舎衛城(しゃえじょう)にあって、釈迦が説法したという大寺。
     祇樹給孤独園(ぎじゅぎっこどくおん)の略。
精舎・・・精錬行者の宿舎の意で、寺院の別称。
諸行無常・・・経文の中の一句。因縁によって生じ、三世を環流する一切万物は、
     生滅流転して止まることなきをいう。
沙羅双樹の花の色・・・沙羅は、梵語で高遠の意。
   1.釈迦が沙羅林の樹下で2月15日入滅したとき、釈迦の死に
     感じて沙羅樹はことごとく枯れて白くなり、白い鶴のようになったという。
     「花の色」は、「鐘の声」の対句として用いたもの。
     本来、「葉の色」とあるべきところ。
   2.また、釈迦が入滅するや、急に時ならぬ花をつけ、まもなく枯れたという
     伝説もある。  

さら‐そうじゅ【娑羅双樹】

さらそうじゅ(‥サウジュ)【娑羅双樹】
1 フタバガキ科の常緑高木。インド北部原産で、日本では温室で栽培される。幹は高さ三〇メートルに達する。葉は互生し有柄の卵状楕円形で先はとがり長さ一五〜二五センチメートル。葉柄の基部には托葉がある。葉腋に径約二センチメートルの淡黄色の五弁花を円錐状に多数集めてつける。果実には長さ五センチメートルぐらいの、萼が生長した翼が五枚ある。材は堅く、くさりにくく、インドの代表的有用材で、建築材、枕木、橋梁、カヌーなどに用いる。樹脂はサール‐ダンマーといい、ワニスや硬膏の原料になる。釈迦が入滅した場所の四方に、この木が二本ずつ植えられていたという伝説からこの名がある。しゃらそうじゅ。さらのき。さらじゅ。しゃらじゅ。
2 「なつつばき(夏椿)」の異名。

Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition) ゥ Shogakukan 1988/国語大辞典(新装版)ゥ小学館 1988


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