曲名 | 解 説 |
「嵯峨の秋」 2000.11.7up |
菊末検校 作曲 歌詞 『さらでだに(そうでなくても)、ものの淋しき名にたてる(もの淋しいことで有名な)、 嵯峨の(京都・小倉山の東麓(現在の右京区)、大堰(おおい)川を隔てて嵐山に対して、 この辺一帯の野原を、嵯峨野といった。)あたりの秋の暮、 月は隈なき(満月)柴の戸に、忍びて漏らす箏の音は、 峯の嵐か松風か(松風は、箏の音にたとえられている。)、 尋ぬる人のすさび(つれづれの御遊び)かや。 【手事】 (初段・二段・三段) 駒をとどめて聞く時は(耳をすませば)、つま音(琴の爪音)しるき(明らかに)想夫恋(曲名)、 つま音しるき想夫恋。 (想夫恋は、文学上の想定した楽曲であって、実際には存在しない。) 菊末検校(1892年(明治)ごろ)の作曲で、(前歌−手事(三段)−後歌)の手事物形式で作られている。 平家物語の小督の局を題材にしたもので、秋の嵯峨野のあたりを、詩情豊かに表現している。 小督は、琴の名手で、歌詞には、平家物語巻六「小督」の一部が使われている。 |
「嵯峨の春」 2000.3.25up |
松浦検校 作曲 浦崎検校 箏手付 歌詞 『去年(こぞ)見にし、弥生なかぱの嵯峨の春。(陰暦三月) 嵐の山の山桜、色香妙(たえ)なる花の宴。(山桜の色香もさることなから、美しい人の色香も) 散リても残る心の花に、思ひ乱るる憂身(うきみ)にも、また繰リ返ヘすこの春も。 汲むや泉の大堰川(おおいがわ)、浮ぶ筏(いかだ)の行く末は、 人の手活(い)けとなる花を、(誰か他人の妻となる女)恨むやおのが迷ひをぱ、 拂ふ(はらう)は法(のり)(仏法)の御誓ひ(おんちかい)。(仏のご誓約) 《ここからが放下小唄》 嵯峨の寺々、廻らぱ廻われ。 水車(みずぐるま)の輪の 臨川堰(りんせんせき)の川波、 川柳(かわやなぎ)は水に揉(も)まるる、 ふくら雀は竹に揉まるる、 都の牛は車に揉まるる、 茶臼(抹茶を作る石臼)は挽木(ひきぎ)(臼を廻す木製のとって)に揉まるる。 《ここまで》 【手事】 われは色香に揉まれ揉まれて玉の緒(生命)も、絶えぬぱかリに思ひ川。 (思いが川のように深く、水が流れるように絶えないこと) 床に渕なす夜半(よわ)のきぬぎぬ。(涙で床が濡れる) 1800年頃に作曲された曲。浦崎検校の箏手付で、(前歌「本調子」−「三下がり」−手事「本調子」−後歌)の 手事物形式で作られている。 花見の宴で見染めた女性が忘れられず、絶えぬ思いに夜半の衣々を涙でぬらしている。という珍しくも男の思慕の 情を歌った曲である。歌詞は、京都・嵐山の桜や嵯峨の春景色などをうたった陽気な曲で、謡曲「放下僧」のなかに ある放下小唄をとり入れてある。 放下僧(ほうかぞう)・・・雑芸を主とした大道芸人の一種。 |
「桜川」 2000.4.11up |
光崎検校 作曲 歌詞 あらたまの(新玉:年があらたまる)、春は氷も解け初(そ)めて、浪の花こそよすらめと(実に好ましい)、 瀬々(ぜぜ)(多くの瀬)の白波しげければ、(川のあちこちの瀬に白波が立つので) かすみぞながす(霞を流したようにかすんでいる)浮島の(茨城県霞ヶ浦の中にある小島)、 【手事】 げに面白や(まことに面白い)。 昔の春も今もなほ、変わらで花のうるはしく、水もにごらぬ桜川。 (桜川・・・茨城県の西部を流れる川で、霞ヶ浦にそそいでいる。) 作曲年不明(?〜1853ころ) (前弾き「二上がり」−前歌−手事−後歌「二上がり−三上がり−本調子」の 手事物形式で作られている。 歌詞は、謡曲「桜川」の一部分を引用しているが、内容には関係はなく、陽春のころ、桜が桜川の川面に散る 美しさをうたっており、華やかな地歌物である。 |
「残月」 2001.10.19up |
峰崎勾当 作曲 『磯辺の松に葉隠れて(松の葉に月が隠れて見えない)、 沖の方へと入る月の、 光や夢の世を早う(月の光は、夢のように薄らいで。この世をはかない世にたとえる)。 覚めて真如(絶対不変の真理のこと。煩悩が解け去って現れ出る心の本体)の明らけき、 月の都(弥陀の浄土)に住むやらん。 (手事) 今は伝てだに(つてだに:たよりが来ない(はっきりしない)月の掛詞)おぼろ夜の、 月日ばかりは廻り来て(忌日は徒らに廻って来るけれども。)。』 18世紀末(天明1781〜寛政1789〜1801の頃)の作曲。 作曲者は、地歌・三絃の名手であり地歌の作曲者として最も代表的な人である。 この曲は、(前弾き−前歌−手事−後歌)の手事もの形式で作られていて、若くして世を去った 作曲者の門人(女性)への追悼曲として作曲されたと伝えられている。曲名は、その女性の法名 「残月信女」に因んだもので、追善曲の代表曲である。 |
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