【か】

曲名 解        説
「楓(かえで)の花」

2000. 6. 10 up
松坂検校 作曲 尾崎宍夫 作詞 (明治新曲)

 花の名残り(桜の花の散った頃=初夏)も嵐山(京都)
 梢々(こずえこずえ)の浅緑(新緑のころ=初夏)
 松吹く風にはらはらと、散るは楓(かえで)(花楓)の花ならん。
 
(楓は、葉に先立って赤い花が咲き新緑のころはらはらと散るので花楓と言われる)
 井堰(いせき)(川の流れをせき止めたところ)をのぼる若鮎の、
 さばしる(さは、接頭語:すばやく走る)水のみごもりに(水籠り、水中に隠れる)
 鳴くや河鹿の声すめる(澄んでいる)、大堰(おおい)(京都:大堰川)の岸ぞなつかしき。
 【手事】
 川上遠くほととぎす、しのぶ初音(しのびやかに鳴くホトトギスの声)に憧(あこが)れて、
 舟差しのぼし(舟に棹さし上流に上って)見に行かん。
 戸無瀬(となせ)(大堰川の上流、嵐山付近の地名)の奥の岩つつじ。
 
 (・・・川上から聞こえるホトトギスの声を慕って上流に行けば、戸無瀬の奥には、岩つつじが
    咲いていることであろう。)

1800年代後半(明治)頃に作曲された箏曲。明治新曲の代表作で、(前弾き−前歌−手事−後歌)の
手事物形式で作られている。歌詞は、京都嵐山の初夏の風光を歌っている。
「楫枕」(かじまくら)」

2002. 8. 1 up
菊岡検校 作曲  (古曲)
 『空艪(からろ)(急がず気ままに漕ぐ魯)押す水の煙の一かたに(ひとりの男に)
  靡き(なびき)もやらぬ(なびくわけにはいかない)川竹(遊女の身の上=浮川竹ともいう)の、
  うきふし繁き(憂きことの多いことを竹の節の多いことにたとえる)
  繁き浮寝の泊まり舟。(いく夜もいく夜も舟着き場の舟の上に寝るような身の上)
  よるよる(夜ごとのつとめと身を寄せるをかける)身にぞ思い知る。
  浪か涙か苫(とま)(舟の屋根)洩る露か、 濡れにぞぬれしわが袖の、
  絞る思いをおしつつみ、
  流れ渡りに(水の流れにまかせるように)浮かれて暮らす、(憂うつに)
  心尽くし(千々に心をくだく)の楫 枕(舟で寝ること=不安定な頼りなさ)
  【手事】
  さして行方の遠くとも、  ついに寄る辺は岸の上の、
  松の根堅き契りをば、(松は色変えぬ女の貞操、根は寝にかける)
  せめて頼まん頼むは君に、(あなただけしか頼む人はいない)
  心許して君が手に、  繋ぎとめてよ、(安らかな生活にして欲しい)
  千代よろづ代も。 』

この曲は、文政(1818〜1830)の頃の作品。箏は、八重崎検校の手付けで、替手式の手付けが
してあり、段返しの手事の初めと言われている。作詞は、京都の橘遅日庵、調子は本調子、後歌
で二上りとなる。楫枕とは、舟で寝ることを言い、我が、身の上を舟にたとえ不安定な状態で生きる
遊里の女たちの感傷的なあきらめが謡われている。




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